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純愛のお話
【42 】「八つ墓村」 横溝正史 作
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浩哉
2024/06/05

前回の本を読んで、ストーリーには10種類しかないっていうのを驚きとともになるほどと感じたんですけれども。

その中で、探偵ものは何に入るのかなって思ってまして。どうやら「なぜやったか」って言うジャンルに入るのだなと思いました。

それと言うのも、本にも書いてあったんですけれども、やはり動機が重要で、そこで社会のいびつさをあぶり出すようなところがあると。

そこでも見ている人も、多かれ少なれ、思い当たる節を見て、心を動かされます。

そこまで読んで、ぼく自身は正直、金田一少年の事件簿を連想しました。

あの作品。基本的に犯人が悲惨な目に合っていることが多いからです。そこで社会システムのやるせなさを感じるわけです。

で、なんとなく金田一少年のおじいさん、金田一耕助の作品でも読んでみようかなと思い、八つ墓村に白羽の矢を立てました。


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〜〜個人的な見どころ〜〜

①内容。ストーリー

舞台は昭和20年代交換後半、第二次世界大戦が終わった後しばらくしてからの時代設定です。


20数年前、舞台の村で襲撃事件が起こりました。

村のお金持ちである、権威のある人が突然発狂して、32人の村人を虐殺します。犯人はそのまま行方不明になり、事件は犯人が捕まらないまま終わってしまいます。


主人公は、その事件を起こした犯人の子供という事で、村に招聘されます。

その権威のある一家が訳あって、後継者がいないという事で白羽の矢が立ったんですね。

主人公はその招聘に応じようとしてから、殺人事件に巻き込まれまくります…。


基本的に主人公の回想録として話が進んでいきます。

主人公、大変です。

主人公の行く先々に事件が起こるからです。

当然新しく村にやってきたとたん、主人公周りで次々人が死んでものだから疑われます。

そこをどうやって乗りきっていくのかが全体的な見所になります。


②金田一シリーズ?

この作品は、金田一耕助シリーズなのかもですが。

本人も作中で語っている通り、確かにほとんど全く推理していないと言っても過言じゃないです。

鍾乳洞探検の時に探検の仕方として少し役に立ったくないでしょうか?


本当、無理して金田一耕助を出さなくてもよかったんじゃ??ってくらい。それだけ八つ墓村と言う作品は完成度が高いです。


③役立つ学び

作者の文体がとにかく柔らかくて、わかりやすくて、品があります。

なんかね。Xなんかであった漫画なんですけれど。

昔の漫画は、わざと四字熟語を使ったりする事で勉強にもなるって事をやっていたってお話があったんですけれど…。


横溝さんの作品にもそんなにおいがプンプンしています。

いくつか抜粋しますと‥。

例えば、217ページ 

「私は自分を囲繞する異様な疑惑の雲を・・・」

この囲繞。意味的には「まわりを取り囲むこと」

だそうなんですが・・・。

これ、紙の本なので、調べるのに骨が折れます。

あ。いにょうって読むようです。


295ページ

「こういう老婆が興奮すると、頑是ない、五つ六つのこどものようになるものだ」

この「頑是ない」ってのが、セットになっているようで。幼くて、物事の善悪の判断が付かない、ききわけがないって意味だそうです。


そういった言葉が、おそらく50ページに1つくらいはあった気がします。

ただ、面白いのは、どんな意味か全くわからないんだけれどね、単語だけで。文章を読んでいくと意味はなんとなくわかるっていうところです。


もしかしたら、たしかに言葉ってこうやって覚えていたかもしれないな?と懐かしい気持ちになりました。


バランス感覚が絶妙な気がしたんですよね。全くよくわからない漢字を使うタイミングが。

そんな事は無いんでしょうけれども、したら、意識してわざと難しい漢字を適切なタイミングで使ってたりしたのかなと。


 〜〜まとめ、雑記〜〜

SAVE THE CAT的に、探偵モノなので、「なぜやったか?」ってストーリー展開ですね。

このお話は、「家の中のモンスター」の成分も大きいかなと。モンスターが、人間ではありますが。


この作品のツッコミどころがあるとすれば、主人公よ。さっさと村を出ればいいやないか?ってのがそれだと思います。

それについて、主人公が自ら弁解らしきものをしています。僕はいざとなれば、大胆になるとか、決めたらやり抜く的な。


ただ、最後の方にも主人公が白状したように、正直に言うと、どうやらやっぱり遺産、お金が目当てだったようです。

なので、主人公は家の中(村)から離れられなくなります。

ま、警察にも村から離れないようには言われてたようですが…。


で。最終的に、「なぜやったか?」って所に戻ってはきます。


最後は犯人と最終的にヒロインになる女性。

この対比に尽きるなと思いました。

犯人の動機は至ってシンプルでして。

やっぱりお金なんです。


お金と少しの愛ってイメージがありました。

犯人に、愛の要素がどこまであるのか?ってのが、恐らく読む人によって意見が変わるかもしれないのが面白いところかとは思いますが…。


一方、ヒロインは、主人公にたいする純粋な愛のみで行動しています。

その行動が、結果的に絶体絶命だった主人を救い、事件を解決の方向に持っていったとは思います。


もう1人主人公のことを思っていた義理の姉も存在して、こちらは少し少しだけいびつな愛ではあるんですけれども、その愛で.結局主人公を助けました。

主人公、なぜモテるって感じであるんですけれどもね。

なので、この作品。

純愛のお話だったんだなって思って、衝撃を受けました。

愛は色々救ったんです。


では、また。