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オタクの力
【27】「女王ロアーナ、神秘の炎」 ウンベルト・エーコ 作
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浩哉
2024/04/13

ある事故で記憶喪失になった60代の男のお話です。

まだ上巻しか読んでいないんですけれども。

話がどんな展開かいまいち読めなかったんですが、あることに気づいて少し戦慄している状況です。


恐らく作者の回顧録のような形になっている作品です。


また、今回も写真が上手くアップできないので、文章のみで!!


〜〜個人的な見どころ〜〜

 ①記憶についての描写

記憶喪失といってもエピソード記憶と言われる分野がまるまる抜けて落ちている感じです。


例えば、コーヒーっていうのは何かっていうの覚えているけれども、自分がスターバックスで飲み、初めて飲んで、衝撃を受けたコーヒーの味といった形では覚えていないといった感じです。


最近何かの本で読んだんですよね。

「芸術的創造は脳のどこから産まれるか?」 大黒達也著

この作品でした。

潜在的記憶とエピソード記憶のお話がさらに詳しく載ってます。


なので、これに関する理解は早かったです。

このエピソード記憶を突き詰めていくと、人がストーリーに弱かったり、意識の正体がこれの可能性があったりで、わりと旬な考えなんですが。


2004年に書かれた作品っていうのが、すごいなって改めて思いました。


 ②挿絵が多く、綺麗。

カラーですしね。


挿絵というのが、主人公のコレクションなんです。も、主人公が古書商をやってるんですね。


主人公が記憶を自らの記憶を取り戻すために本とかを読んだりしているんですが、その本のコレクションの表紙を載せてる場合が多いです。


作者は、「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」も発表していて、対談形式の作品なんですけれども、その本で思いっきり自分の古書コレクションの自慢をしています。


結局その作品では、書物の絶滅、本屋がなくなるということではなくて、ほんと実際コレクションとしての紙の本に焦点を絞った話が多くて面白かったんですけども…。


それと同じで作者は自らのコレクションを顕示したいがためにこの作品を書いたんじゃないかと思って冒頭、戦慄していたわけです。


どこまで趣味成分増し増しの作品なんだって思いました。

少なくともある章ではほぼ全てにおいて、蔵書自慢、懐かしさを熱く語る章になってますね。


もうわかった。わかりました。あなたのコレクション、知識、凄いっす!!ってなりながら、しかもついていけないので、ほぼ読み飛ばしながら…。

だから早くストーリー進めて!って途中思いましたよ。


 ③作者の生まれた時代。

どうやら作者、主人公はイタリア生まれのようです。

イタリアの第二次世界大戦敗戦と大きく関わっています。

配色濃厚な1943年に作者おそらく10歳から11歳だったようです。


その時点の戦時中のイタリアの社会の様子を自分自身の作文ですとか、当時のラジオ番組かな。その辺を丹念に掘り起こしています。自分自身のエピソード記憶がないので、客観的にその時はどういう社会だったかっていうのを掘り起こしていく試みが面白く感じました。


こうして読むと、やっぱり戦時中。特に敗戦濃厚の国の様子ってどこも似てるんだなって思いました。


大本営発表、敵国と味方国の露骨な態度の違い、減っていく食料品等等。


ポスターや新聞、教科書のようなものまでそんな表現のオンパレードでした。


これ。日本の同じ時期のこういう描写、ありそでなさそでない気がします。いや、あるんでしょうけど、なんかやっぱり違います。


イタリアのそれ、作者の力もあるかもですが、どっかオシャレ感があります。

なんででしょ。カラー絵が多いからかな?

翻って日本は黒塗りとかで証拠隠滅とか計ったのにヒューチャーされがちで地味だからかな?

なんなのかなぁ。

心理的に目をそらしているだけかもしれませんね。


 〜〜まとめ、雑記〜〜

さて。今のところ、作者の回顧録ってイメージが強くて。

作者=主人公って考えても差し支え無さそうです。

エピソード記憶がないので、当時の主人公の思考とかは予測するしかないんですね。

そこが自伝や回顧録とは違うところですね。


当時の主人公のストーリーが抜け落ちてる変わった形式。あくまで当時を客観的に見てます。


それでも、いやだからこそ、主人公と同年代の方々は、

ワカル!!

あったな〜そんなこと!!

懐かし〜!!

の連発かもしれません。


とにかく、過去を振り返る表現方法の一つとして、こういった形で本に残すのは面白いなと思います。

どうしても一部、同年代じゃないとわからんやろ?ってのもあるのは認めます…。


とはいえ、後半少し面白い展開になっていきます。

主人公の実家を探検しているうちに、まるで今話題の「変な家」みたいなんですけれども、謎の隠し部屋があって。


それがアンネの隠れ家みたいな感じで、戦時中人をかくまったときに作られた部屋のようです。

この部屋は一体何なのかどうなのかどこから入るのかっていうのが判明して、中に入ったところで下巻に続きます。


最初は作者の蔵書自慢、懐かしさを語るだけの本かな?かと思ってましたが、さすがにそれだけではなく面白い展開になってきました。先が楽しみです。ではまた。