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人が変わるのは奇跡でも起きない限り難しい
【36】「しあわせの香り」 八木沢里志 作
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浩哉
2024/05/15

純喫茶トルンカの続編です。

この続編、テーマが一貫してました。

再会の物語です。


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そういや、前作はどちらかといえば出会いに焦点が置かれてたように今思います。


〜〜個人的な見どころ〜〜

①1作目「午後のショパン」

「この作品の主人公は、トルンカ常連のおばあさん。ある雫の一言と、店に流れたショパンの曲がきっかけで、初恋の人を思い出します。

今まで蓋をしていた気持ちが開かれて、感情が抑えきれなくなっています。


ある人との予期せぬ再会で、初恋の人を探そうと決意します。とはいえ、おばあさんも80歳。初恋の人は10歳ほど年上なので、元気な可能性は限りなく低い。

それでも、初恋の人の歩んだ軌跡を知りたくて探しますが、やはり手がかりがありません。


そんなある日、トルンカで映画撮影をするってお話を聞きます。

なぜか、その撮影を見なければならないと感じたおばあさん。

意気込んで見に行きますが…」


まさか、主人公がおばあさんになるとは思いもしませんでした。

しかも60年位前の初恋お話でどういった展開になるか、全く予想できませんでした。

それでもトルンカらしい展開。結末でした。


自分でも忘れていた心残り。

それに気づき、行動し、やがて奇跡が起こる作品です。


②2作目「シェード・ツリーの憂鬱」

「このお話の主人公は雫の幼馴染。浩太。

雫や喫茶トルンカの前ではお調子者のキャラを演じていますが、学校やクラブ活動では違った面を持っています。


雫を守ると誓った。彼の使命。

白血病で亡くなった。雫の姉の最後の約束でもありました。

そんなことを思い出しながら、日々生活を送りますが、クラブ活動においてある挫折を味わいます。

そんな中、トルンカに映画撮影がやってきて、それを見学見学に来た浩太。

主役の女優に、雫の姉の面影を重ねます。

撮影が終わり、すぐに帰ろうとする女優。

浩太は必死で追いかけます…」

ってお話。


再会の話でもありますが、浩太の初恋の話でもありました。雫の姉との交流とクラブ活動での事件の数々。正直、意外も意外。一番意外性があった作品です。

女優を追っかけて行ってからの展開も意外にも程がありました。


1作目のおばあさんの変化と違い、まだまだ変化の途上感は否めませんが、青春の1ページって感じがしました。

とても分厚くて内容の濃い1ページですけれども。


③3作目「旅立ちの季節」

「主人公はデザイナーと花屋を兼業してる、トルンカの常連絢子。

人の世話を焼くのが好きな彼女。

本業のデザイナーの仕事が芳しくありません。


仕事に妥協できず、契約を打ち切られ、自信も何もなくなっているところへ元カレに再会します。

元カレが鬱になっていたことを知り、衝撃をうけます。

それでもようやく復活していってる元カレに、お金に困ってるなら一緒に住もうという提案をします。

他人の世話を焼いている場合でもないのに。


それでも無理をし、やがて倒れてしまいます。

ゆっくりと自分を取り戻し、自分と向き合います。そこである決断をします…」


魔女の宅急便のキキようなスランプに陥り、絵描きのお姉さんがアドバイスしたように描くのをやめて、ゆっくり休んで描きたくなって描いた感じがいいです。


元彼と一緒に住むって言うお話になり、またちょっといろいろ恋愛のめんどくさい部分を押し出してくるのかなと思ったんですが、そういったことがなかったです。

その辺がこの作品の特徴のような安心して読めるっていう作品の特徴を表しているかなと思いました。


 〜〜まとめ、雑記〜〜

〈再会とは、人生における一番身近な奇跡である〉

絢子が自分で作った格言です。

これに沿って話が進んでいくために、特徴が2つあります。


まず1つ、本当に軽い奇跡が起こります。3作品ありますが、3作品とも奇跡としか言いようがないことが起こります。

ただ、あまりにも爽やかなために、嫌味というか、そんなわけないやろ?的なツッコミの感情があらわれません。


そしてもう1つ。

それぞれの主人公の内面に変化がおこります。

再会をきっかけとして、自分の内面に気づき、それを乗り越え、最後は笑って過ごせるようになります。


そのために、余分なサスペンス要素、不確定要素を排除しているように思います。


1作目では、僕が個人的に気になっていたキャラを、あっさりと登場させます。

それで、この後3作目。再会は、読者目線だとあっさりとしたものになるんですか、それによって絢子の中身がどうなるか?どう変化していくか?って所に焦点を置いていたと思います。

逆に言えば、絢子の再会はほんと色々特殊です。

たくさんの人との再会だなって個人的には思いました。亡くなった母親、元カレ、トルンカのある人とか。


爽やかすぎて、全体を通してみたらベタって感じになるのかもしれないんですけれども、王道のベタていうのは、やっぱり何よりも強いですよね。

志村けんさんが、コントでのベタを大切にしたような感覚で、この作品のベタな感覚は素晴らしいなと思いました。


物語を作る上ですごい参考になる本でもある気がします。

物語っていうのは、「人はどうやって変わっていくか」って事ですよね。

これを読んで改めて人って変わることが難しいんだなと思いました。

再会っていう、奇跡が起きて、やっと変わる事ができるかもしれない。それくらいのもんなんだ。


僕も、最近いろんな本を改めて読んだり、Xのフォローする人のジャンルを変えてみたりして、本当に自分に致命的に足りないことが見えてきて、それを変えようと頑張っていますが、やっぱなかなか変わらない。

それでも自分の中では少しずつ変えようとしています。

これがおそらく、Xとか本の作品の中だけでなく、実際に人に会って話をするって言う形になれば、また全く違うのかもしれません。


ともかくも、それぐらい人が変わるっていうのは、奇跡でも起きない限り難しいって言う結論を身をもって感じてる日々です。

ではまた。