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懐かしいショートショート
【8】「信仰」村田沙耶香 著
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浩哉
2024/02/07

今回はこの作品。短編集です。

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コンビニ人間が面白かったので読んでみました。

前回が好みに合わないとか書きましたが、今回は好みすぎる作品でした。


   〜〜個人的な見どころ〜〜

 ①コンビニ人間?

最初のタイトル。表題にもなっている「信仰」で、いきなりやられました。


コンビニ人間は、最初に読んでいくと、主人公がコンビニで頑張って働いている健気な人なんだなぁって描写から始まります。

続く次の描写で「えっ?」ってなるんです。


この信仰も、カルトをつくろうよって誘われたことに対し、主人公がまっとうに反論します。うん。まっとうな感覚の持ち主だなって。

次の描写で同じように「えっ?」てなります。

この「えっ?」って感覚の持っていき方が本当に面白い。なんか、参考になりました。


 ②いろんな話があります。

どの作品も今の現状を鑑みて少しブラックなユーモアで描かれてる感じがします。

誰もが思ってる感覚、不安を斜め上な方向で想像を拡げて描ききります。

短編集というよりは、ショートショートといってもいい作品もあります。


もっとショートショート的な作品、書いてほしいなと。

最近、文字を長く読む人が減ってきてますが、ショートショートなら読ら人が増えてくれるかも…。

難しいですかね?


 ③思いきった発想。

いつぞやの「知能侵蝕」でも書きましたが、科学が発達すると、かえってSFが書きにくくなる問題があります。遠未来ならともかく、近未来だと特に。

AIや、生物学とかでも、いくらなんでもコピーロボットのような遺伝子技術は、いくらなんでも10年後とかはまだ無理そう。

って謎の常識が働くんです。

ところが、短編集だと年代の設定をある程度無視できるので、思いきった作品が書ける感じで。

「書かなかった小説」

こちらが面白いです。


    〜〜まとめ、雑記〜〜

どうせなので。

それぞれのタイトルとひとこと感想を。


「信仰」

カルトやマルチの悪徳商法を信じる人と、原価病の闘いなのか共闘なのか、ドタバタ劇なのか。

両極端の生き様を見て、生きる上でのバランスの難しさを知る作品。もしくは笑い飛ばす作品です。


「生存」

現実の格差が、ついに広がるところまで広がります。

ついに遺伝子になんか差が出始めるようになるようです。

これ。結局世の中的には数の論理が強いので、しまいにはこちら、遺伝子が変化してる「野人」が世界を生き残っていくのでは?って思ったりしました。


「土脉潤起脉」

こちら、「生存」の続編みたいな感じで。

野人の概念が出てきてます。

前作ではふわっとしか触れられなかった野人についての生態をちょっぴり深掘りしている感じでしょうか。

作品では野人の数には触れられてなかった気がしますが、おそらくこちらの方が多くなるんじゃないかな?って。あたらしい世界を想像しました。

この想像させるのが凄いし面白いなとつくづく思います。


「彼らの惑星へ帰っていくこと」

不思議な作品です。

宇宙人って書かれてますが、どこにも姿は見えず、でもかなりの人が感じてると。

ただのしっかりとした現実逃避なのか、現実に宇宙人がいて、そのように仕掛けているのか。

さあ、どっち?、みたいな。


「カルチャーショック」

均一とカルチャーショックという、2つの世界。

こちらも、両極端な国の人たちの交流を描いています。

今の世の中、なかなか感じられないですが、相手に対する許容範囲の狭さ。

こういう考え方、こういう世界もあるよねってゆー流れが全くないのが面白いです。

凝り固まるっていうのがこういう事なんだっていう教訓を感じられました。


「気持ちよさという罪」

なんていうか。捉えどころのない作品でした。僕にとってですが。


なんていうか。全ての人に受けいれられる考え方なんかないのでは?っていう感じでしょうか。

今のキャンセル社会が産んだ徒花のような。

そんな作品です。

極端。そう。信仰での登場人物のように極端なんですよね。

極端が、極端を産んで。地味なところにも侵食している感じですね。


「書かなかった小説」

この作品。個人的に一番好きです。

ルンバのように、家電で自分のクローンを購入できる社会。

ルンバよりちょっと便利的なノリで書かれてたとおもんですが、

ちょっとどころじゃなく便利で、まさにコピーロボット。


コピーが働きに行っても違和感なく、社会もそれに当たり前のように適応しているというのが面白いです。


これが、一体だけならまだしも4体買うってね。

家が手狭になりますが、働けるので金銭的にも何とかなるんでしょう。

ただ、これまた違う方向で思いもよらぬ方向へ行くんですが・・・。

こういうの、ロボットの反乱とかでありがちなテーマですが、反乱の方向が今っぽくて面白いです。


「最後の展覧会」

この作品も好きです。

かなり未来の物語。

藤子・F・不二雄のSFに出てきそうなお話でした。

上手く言えませんが、場面がイチイチ藤子・F・不二雄の画で浮かんでくるんですよね。

平和な宇宙規模の探検物語です。

何とも言えない作品ですね。

ただ、心にグッとくるのを素敵な表現しています。


本当、どの作品もそれぞれ良かったです。

語彙力がなく、捉えどころがない的な表現を連発してますが…。

何にせよ、久しぶりに推しの作家さんができました。


では、また。