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SFの魅力
【71】「都市と星」 アーサー・C・クラーク
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浩哉
2024/09/14

アーサー・C・クラークの2連発になります。


いや、それにしてもすごい作品でした。

色んな要素が詰まってて、大河ドラマ、長編ドラマにしてほしいなって思ったりしました。


 〜〜個人的な見どころ〜〜

①都市の謎。

不老不死を達成した都市。

そこでは、人類は完全に中央コンピュータに管理されています。

まず、生まれから違います。


人はほぼ、大人の身体の状態ででてきます。

どっから?ってお話なんですが、詳細は描かれていないのでなんともです。


ある、部屋がありまして、そっから出てくるって感じなんです。


出てきた当時、前世の記憶はほぼ無いんですが、20年くらい経つと、前世の記憶がだんだんと蘇っていくようです。

そして、寿命はどうなんだ?ってところなんですが、これも明確には書かれてないですが、1000年、2000年、もしくはそれよりもっと!ってイメージです。


中央コンピュータの意思なのか、なんなのか。

その時が来ると、ある部屋に戻り、終末を迎え、生まれ変わりを待ちます。

そう、完全な生まれ変わりシステムを科学の力で達成しているんです。


そんな都市で生まれた主人公。

生まれてくる人間は、基本生まれ変わりなんです。

当然ですね。このシステムで10億年やっていってるんですから。

ところが、稀に誰の記憶も受け継いでいない人間が生まれます。

何故かは誰にもわからない。

それが主人公です。


恐らく、わざとバグを作って、システムの硬直を防ぐんだろうってなってます。


この時代に、不老不死のシステムができたらこうなるだろうって、ここまでとことん考えるのはすごいですね。


②違った進化を遂げてる人間との邂逅

主人公のいる世界はあくまで都市。

都市の外がある事は、全員が知ってます。

ただ、全員都市の外に不自然なほど興味を持ちません。


そんな風にある意味プログラムされてるので仕方ないですが、主人公は違います。


そういった周りの同調圧力というか、プログラムに与しません。そんな風に作られていないといいますか。

なので、色んな手管を使い、都市の外へ出ようとします。

結果的に、この都市の主である中央コンピュータの協力などもあり、主人公は無事、都市の外へ出ることが出来ます。


出た後、わりとすぐに村で(別の都市ですが、雰囲気は村でした)別の人類に出会います。

10億年ぶりの邂逅です。

そこで、えらい衝撃を受けるんですね。主人公は。

相手も緊張してますが・・・。


ただ、相手の村の人々の、権力上位の人間は主人公の都市の事はある程度把握していたようです。

その辺り、ちょい複雑ですね。


村の人々。もちろん不老不死とは無縁です。

寿命は200年くらいだったかな?長いは長いですが、10憶年も人類が地道に進化を続けりゃあね。それくらいになりそうではありますね。


村の人々は精神感応。テレパシーの持ち主です。

しかも、読み取られたくない人(主人公)には読み取らないという、プライバシーに配慮した能力です。それ、すごいですね。


村の人たちにとっては、話すよりもテレパシーの方が楽だったりするんです。

主人公は、子供の存在や、おへその存在に衝撃を受けます。


おへそが象徴的に永遠の命と命を繋いでいくものの違いになってるんですね。


この村で主人公は貴重な友人を得るんですが、お互い、近くて遠い存在である二人の人間。

彼らのやり取りが面白いです。


③宇宙への冒険と帰還。

この2人が、ある場所を探検して、出会った謎の生物とロボット。


彼らが人類の10億年の謎を一部解く存在で、高性能なロケットを手に入れます。

地球だけでなく、宇宙へも自在に行けて、操作はロボットがしてくれるっていうシロモノ。


そこで、むかしは凄かった!という人類の軌跡、もしくは人類を破滅に追いやったといわれている侵略者の痕跡、もしくは侵略者そのものを捜索します。

そこでの冒険譚。


ページ数的にはあっさりしたりしてますが、ここも面白いです。

生物の痕跡があった星、人工的に作られたと思われる7つの太陽。

人類、侵略者の痕跡はないが、植物が異常増殖している星。

そして、謎の精神的存在。


これ、ドラマとかにすれば何話もつんだろ?ってくらい読んでて色々想像してわくわくさせられました。

そして帰還ですね。


帰還して主人公がやりたいことが、ほんと、主人公で安心しました。


 〜〜まとめ、雑記〜〜

強引に3つまとめましたが、まとめきれないくらい1つ1つの要素が面白いです。

ほんとに、今、海外ドラマでやってほしいなってくらい。


かなり前の作品だと思うんですが。調べてみれば1956年の作品だそうです・・。

70年近く前なんですね。

でも、思考といいますか、それらが色あせてなくて。


不老不死の答え、メリットデメリット。それに対する登場人物たちの対話。

今、こうした仮定の話をしても、笑われることなく一考の価値があるように感じました。


未来のテクノロジーに関して、

こうなったら人類はこうなっていくんじゃないか?

っていうのが、全てこの時代に考え尽くされている?

とすら思いました。


不老不死の問題だけじゃなく、人類の本質やら、進化の何たるかとか。色々考えさせられました。


唯一、ロケットが宇宙への序曲とはちがい、イマイチどんな原理で動いてるかは明らかにされませんでしたが…。


それにしても面白かったです。


SFの魅力ってのは、ある考え方。

それこそ不老不死になるとしたら、どんなシステムか?人はどうなって行くか?

こういうのの思考実験を、ストーリーをつくって表現されるものなんだなって、実感する作品でした。


では、また。