短編集です。
伊坂幸太郎の作品。
好きな作家で、陽気なギャングシリーズや死神の精度、魔王かいろんなシリーズがあります。
この作品はその中でも一風変わっていて、小学生の子供が主人公だったりテーマだったりしています。
過去に読んだ作品ですが、ちゃんとまとめてなかったなと。この前、少しパラパラって再読したのでまとめてみました。
5つの短編集です。
①逆ソクラテス
1作目。
転校生の安斎が、とにかく一風変わった人でして。
とにかく相手が決めつけてくることに敏感で、先生とかがそんな態度とってくると思いっきり反発しようとしてきます。
確かに先生もそういうところはあります。
とはいえ、安斎くんも、少し面倒くさい。
その辺、軽く流しとけばええやん!
って思ったりもしますが。
小学生の頃を考えると、確かに切実かもしれません。
決めつけに適当に従ってると、面白くなく、自分で考えない人生になるかも。
それを考えると、安斎すげえ!ってなりますし、
「僕は、そうは思わない」
ってセリフ、大人となった今でも重宝できますね。
同窓会の雰囲気も好きです。結論というか、ラストもいいです。
②スロウではない
こちらも転校生が出てきます。
そして運動会がテーマ。
僕は走るのは速くもないですが、遅くもなかったですね。
普通だったかと。
それでも運動会はなんか嫌でしたね。
あーゆーの楽しめる人は、よっぽど足が速く、運動が得意な人で。その中でも、性格も根っからの陽キャ、お祭り好きな人なんだなって思います。
カースト上位の女子。足が速かったっけ…。忘れましたが、転校生やそのほかの自分よりも明らかに、足が遅いと判断した人を蔑んでいます。
ま、やなやつですね。
ところが、転校生が実は元いじめっ子であり、転校先では足が遅く目立たない生徒を演じているってゆー、逆異世界か!って感じの設定でして。
で、転校生が本気出して、みんなビビるって感じのお話です。あ。ネタバレかな? いや、ま、いいか。
③非オプティマス
こちらは、頼りない先生に生徒がつけ込んで、授業の妨害とかをするってお話。
妨害の中心となっている生徒と、一風変わった生徒。
あれ?この生徒も転校生だったかな?
忘れましたが…。
妨害する中心となってる生徒は、今どきこんな事があるのかどうか知りませんが、親がそこそこの権力者なようです。金持ちでして。
で、変わった生徒は、いつも同じ服を着ているような人なので、馬鹿にされたりするんですよね。
先生が頼りないのにも、じつはわけがあったりして。
先生の心が少し救われたなか、授業参観の日が訪れます。
そんなか、ある事件が起こり、色々な立場が逆転していきます…。
その際の先生の演説がなんとも素晴らしい。
昨今のSNSでの罵詈雑言のつまらなさ。
しっかり説明してくれてるような感覚がありました。
特にSNSに触れてないんですが、そんな感覚があるってことは、どっかにSNSでのそういうのが小学生のつまらない行動レベルって事なんだなって1人納得しました。
立場が逆転ってのも、②の作品と共通点がありますね。
④アンスポーツマンライク
バスケット部の物語。
あまり、バスケットを小説で読むことがなかったので、わりと新鮮に読みました。
どちらかといえば、同窓会ものとも言えるんでしょうか。
最後の試合に負けてしまったことに、心のどこかで引っかかりを覚えてしまってる主人公。
大人になって、その時のチームメンバーと合流します。
その中の1人が高校だったかな。
そこでコーチをしています。
そこでの顧問の振る舞いやらなんやらを見てて、色々思うメンバーたち。
そうこうしているうちに、とんでもない事件が起こります。
うん。ホント、「えっ?」って思いましたよ。
ほのぼの小学生、もしくは小学生時代がテーマの短編集で?ガチ?ってなりました。
結果、いい感じで乗り切りましたが、ビックリしました。
⑤逆ワシントン
この作品。正直、メインのお話の内容、ほぼ覚えていないです。
それくらいラストのシーンの印象が強烈すぎました。
①の作品の、
「僕は、そうは思わない」を体現したような④の作品に出てくるキャラがブラウン管越しに活躍していたり、
④のテーマでもあるかな?再出発を体現したキャラが出てきたり。
もうそれが頭の中でいっぱいになりまして。
感動して泣きそうになりました。
人生のこういう瞬間。ホントにたまらないよなと。
自分にはまだないですが。
いつか、こんな瞬間に立ち会えたらなと。
そのためにしっかり生きようってのがテーマかもしれません。
それにしても…。どんな話だったかな??
ソクラテス。
ややこしい哲学者ってイメージです。
なので、逆ソクラテスって題名から考えて、下手すりゃめっちゃ哲学的な難しい物語が待っているのか?って思ったんですが、シンプルでした。
よかったです。
ソクラテスについて。
プラトンの作品に出てくるソクラテスなんですが、わりと無茶な論をしかけているなってのを覚えています。
理詰めで相手をギャフン!っていわしていくようなんですが。その理詰めが、色々と甘いんですよね。
例えば、だれかソクラテスと相手が話してたとします。
ソ「野球の試合、勝った方が強いでよいよね」
相「はい」
ソ「巨人は阪神に勝ったよね」
相「はい」
ソ「阪神はヤクルトに勝ったよね」
相「はい」
ソ「では、巨人はヤクルトより強いということになるね」
相「はあ…」
みたいな論法でして。
冷静に対処すれば、いや、そうとは限らんやろ?ってなるんですが、その隙を与えない感じがします。
ソクラテスは文字を残さないって聞きますが、
そりゃ、文字では残せんわな。文字で残ると粗が目立つし。
って思ったり、
勢いで論破していくタイプの人だったのかな?って思ったりしました。
さて。作品。
全てのお話の根底に、何か作者の意図というか、哲学というか、メッセージみたいなのを易しく伝えている感じが好きでした。
それが全てのお話に共通している感じがしました。
こういう日常系の小説。
読むのに何故かパワーがいる作品も多い中、伊坂幸太郎さんの作品は、本当にパワーがいらないというか、逆にパワー貰えるというか・・・。癒されるというか・・・。
凄いなと改めて思いました。
文庫版で読んだんですが、作者のインタビューも載っててお得感がしました。そして、気づかなかった短編集のつながりにも気づけて良かった。
よく読んだら気づくんですけど・・・。名前って覚えるの苦手で・・・。
最近、短編集で作者が最後に作品について語ってるのを読む事が続きました。
テッド・チャンの息吹もその描写があって。
これがすごく面白い!!
短編集には、ぜひ作者自身の後書きを載せてほしいと思いました。
では、また。