中島らもの「ガダラの豚 Ⅱ」
前回は、まるでトリックのようなストーリーでした。
今回はどんな展開になるのか。
アフリカが舞台ということで、アフリカでトリックと言う形になるのかどうかそれがそれを楽しみに読みました。
①アフリカ紀行
今回、主人公はテレビ局のはからいでアフリカのフィールドワークに戻ることができました。
とは言え短い期間の滞在ですが。
そこで、アフリカの呪術っていうのが一体どんなものか?
そういった事がしっかりと説明されています。
治安、水、気温、あらゆる病気。
アフリカでも高原にある地域は気温が18〜19度であるとか、呪術は本当にアフリカの人たちの中で自然にあるもの。例えば日本人が正月に初詣行ったりするのと同じような感覚だとか。色々豆知識です。
そういえば、南アフリカワールドカップの時に、そんな報道があったかも。
アフリカでは呪いが当たり前みたいなの。
この本を読んでからそのニュースを見れば、もっと違った感じ方ができたかもですね。
今、ふと思いました。
なるほどと思ったのは、やっぱり呪術も社会を維持するために発達した社会形式なんだなと。
昔聞いたことがあるのが、なぜイスラム教徒は豚を食べちゃだめな教義があるのか。
それは単純にイスラム教発祥の地は気温が高くて、菌が発生しやすく、豚を万が一生で食べると、えらい食中毒になりやすいからというのを聞きました。
そんなこんなで、アフリカならではの社会が描かれていて楽しいです。
アフリカではモノのお金が安い旨、書かれてます。当時の日本感覚ですよね。、今は…って思っちゃいます。
「アフリカでは、モノはたくさんある。無いのはお金だけだ」って、通訳の方の名言があったんですが、もしかしたら日本も近い将来、こんな感じになるかもですね。
あるのはモノではなくて、自然とか美味い飯とかに置き換わりそうですが。
あと印象に残ったのは、水の本当の怖さ。
川で流れてもないのに池で水が綺麗すぎるのも要注意。
ってのが、なるほどと思いました
②キャラの成長
成長というか、変化なのか、元に戻ったのか。
よりキャラが躍動してて面白いです。
特に主人公。
長年のフィールドワークのおかげで、一番頼もしい存在になっています。
やっぱり、実際に現地へ行って、真摯に取材していると、主人公のようなコミュ症のアル中でも、現地の人にしっかり受け入れられるんだなと思いました。
ようやく主人公やん!
って思いましたよ。
少しコミカルで、結構好きなキャラになってます。
その妻。
悲しみにひと段落つけることができて、
本来のしっかりとした人格を取り戻しています。
主人公とのやりとりが、いちいち微笑ましいです。
美女と野獣的なノリでしょうか。
清川と主人公の子供の関係もなんか微笑ましい。
清川もいい大人なんですが、ほんと、中学生の兄弟みたいな感じで。
アフリカの人の通訳も、現地の人々も、底に明るさ、軽さを持ってるような気がします。
なので、どんどん軽く、読み進めることができます。
ただ、さすがに今のポリコレ的によろしくない表現があるのも事実。
小錦周りのことは、あまり大っぴらに触れてはいけないな。と思いました。
③トリックの要素?
トリックの要素は少し影を潜めています。
仲間由紀恵も、阿部寛もいませんでした。
どちらかといえば、旅ロケです。
テレビの旅ロケ物を、旅ロケする側から描写していくような感じ。
後半も後半は、一気にサスペンスになります。
逃避行ですね。
ここで、今までの、どちらかといえばのほほんとした雰囲気が一変します。
ガチで深刻でして。人がお亡くなりになりまくります。このあたりもトリックの要素はあるにはあります。
ほら、トリックって最後の方、よくよく考えると、とんでもなく悲惨なこと、多いですよね?
最後、これどうなる?詰んでなくない?
って関東風に思いました。
その辺りの最後のオチもなかなかダイナミックでした。
今回、文庫本の裏側のあらすじは読んだんです。
キジーツの少女=主人公の娘
っていうのはⅠを読んでたらピンと来ると思います。 アフリカの呪術師たちの争いも、やってることは権力争いだったりするので、その辺りはどこも変わらないなと。
で、バキリっていう人の登場が待ち遠しくなりますが、本当に最後の方にチョロっと出てきます。
出てきてからの急展開がすごい。
バキリ自ら、呪術のタネを話し出しています。
話を聞いてみれば、なんだ、そんなことか…。
って感じなんですが、やっぱりミスリードが多くて、気づきもしなかったです。
結局、バキリの背景になるのは、完璧なマンパワーであったり、権力であったりしました。
だから、トリックの要素はあまりなかったです。
謎解きもラスボス自らしているって感じでしたから。
さて、ラストⅢ。
恐らく、主人公の娘をめぐる争いにはなるんでしょうけれど…。
楽しみです。
では、また。